近代和風建築とは、江戸時代までに形作られた日本固有の建築の伝統を引き継ぎ、近代化のなかでつくられた建造物のことです。その特徴として、①庭園と一体化した屋敷構え、②大規模で自由な平面、③複雑な屋根の構成、④柱を省略して階高を高くした大空間、⑤ガラス戸を多用した明るい空間、⑥吟味した良材を用いた技巧と装飾、⑦上質な左官壁、⑧金唐革紙(和紙に金箔などを貼り、版木に当てて凹凸文様を打ち出し、彩色をほどこした手作りの高級壁紙)やタイルなどの工業製品の使用が挙げられます。さらに、二階建の普及と三階建以上の建造物の出現、瓦葺きの普及、洋風要素の導入も見逃せません。
近代和風建築は、大きく4種類(住宅建築・商工業建築・公共建築等・宗教建築)に分けることができます。
Ⅰ.住宅建築

旧日光田母沢御用邸御車寄:日光市本町
栃木県内でもっとも多く現存する近代和風建築です。それらを分類すると、主に城下町や旧街道沿いの宿場町に建てられた明治時代の町家(店舗併用住宅)、官員住宅や社宅、洋風住宅の一部を採り入れた和風住宅、洋風の生活様式を導入した皇族の和風別邸、明治時代以降の開拓農場や避暑地の政府高官や富豪たちの和風別邸、新たな産業の普及に対応した農家などがあります。
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国登録−有形文化財
旧例幣使街道に南面した角地に建つ。「土佐屋」とは、江戸時代に和漢蘭薬種店を営んだ時からの屋号で、明治...
国登録−有形文化財
江戸時代に庄屋を務めた飯塚家によって建てられたもので、本宅の廊下に続く部分に新宅部分が建築されている...
国登録−有形文化財
江戸期中頃より紙商を営んできた老舗で、明治期には県内有数の紙問屋となった。代々「源蔵」を名乗ってきた...
Ⅱ.商工業建築

旧金谷カッテージイン:日光市本町
栃木県は、日光や鬼怒川、塩原、那須など、温泉や豊かな自然景観で知られた保養地・観光地があります。そのため、今なお明治時代以降に建てられた和風建築の旅館やホテルが残されています。また栃木県内には、県南部を中心に近代化された繊維産業や伝統的な醸造工場が現在でも多く残っています。
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国登録−有形文化財
上鉢石で古美術商を営んでいた小林庄一郎が「大名ホテル」として建設。昭和18(1943)年6月、古河電...
国登録−有形文化財
日光二社一寺の門前町として栄えた上鉢石町で、金谷ホテル入口脇に建てられた物産店。当初、金谷ホテルの経...
国登録−有形文化財
明治26(1893)年開業時の木造2階建てを、昭和10(1935)年に地面を掘り下げ3階建てに増築し...
Ⅲ.公共建築等

旧黒羽銀行:大田原市黒羽向町
ここで取り上げる公共建築とは、官公庁の公的建築にとどまらず、たとえば旧黒羽銀行(足利銀行黒羽支店)や古河掛水倶楽部旧館などといった、民間の建築であっても一般に広く利用・公開されている建物を含んでいます。
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国登録−有形文化財
黒羽のまちなか中心部に建てられた2階建の寄棟造桟瓦葺(さんかわらぶき)(横断面が波状で軽量の瓦で葺く...
国登録−有形文化財
平成15(2003)年3月の閉校まで使われた木造二階建の桟瓦葺(さんかわらぶき)(横断面が波状で軽量...
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大正4(1915)年、徳川家康の没後300年を記念して行われた「日光東照宮三百年祭」記念事業のひとつ...
Ⅳ.宗教建築

織姫神社拝殿:足利市西宮町
社寺建築に代表される宗教建築は、明治時代以前の伝統的な建築様式を受け継いでいて、一見すると近代的な特徴を見つけるのは難しいです。しかし、大正12(1923)年9月に発生した関東大震災以降は、伝統的な様式や意匠(デザイン)を受け継ぎながら、鉄筋コンクリートなど近代的な構造を採用した社寺建築が現れるのが特徴です。
宗教建築に分類される文化財(ランダム表示:一覧リスト参照)
国登録−有形文化財
文安5(1448)年、足利長尾家の菩提所として両崖山(りょうがいさん)の麓に創建された。現在の本堂と...
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天長4(827)年、慈覚大師円仁の創建と伝わる。室町期より武将をはじめ多くの人々の崇敬を集めたが、特...
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